
「いつもの鶏むね肉が、驚くほどしっとりジューシーに」「かたまり肉のローストが、まるでレストランの味に」…そんな夢のような話を実現してくれるのが「低温調理」です。
料理好きの間で話題の低温調理ですが、「なんだか難しそう」「特別な道具が必要なんでしょ?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、低温調理はポイントさえ押さえれば誰でも簡単に始められ、普段の料理を格段にレベルア
ップさせてくれる魔法のような調理法なんです。この記事では、低温調理の基本から、専用調理器がなくてもできる方法、そして今日から試せる絶品低温調理レシピまで、その魅力を余すところなくご紹介します。
そもそも低温調理って何?「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第四の調理法
低温調理とは、食材を真空パックや食品用耐熱袋に入れて密閉し、100℃未満の比較的低い温度のお湯で正確な温度管理をしながらじっくりと加熱する調理法のことです。
フランス料理の技法がルーツで、「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ「第四の調理法」として注目されています。
従来の高温調理では、お肉のタンパク質が68℃以上で変性を起こして硬くなり、大切な水分や旨味が外に逃げ出してしまいがちでした。
一方、低温調理はタンパク質が硬くならない55℃~68℃といった絶妙な温度帯で加熱するため、食材本来の水分や旨味を内部に閉じ込めることができます。
これにより、お肉は驚くほど柔らかくジューシーに、魚はふっくらと、野菜は甘みを増して仕上がるのです。
低温調理の嬉しいメリット4つ
低温調理には、料理が美味しくなる以外にも、忙しい主婦にとって嬉しいメリットがたくさんあります。
- お肉や魚が驚くほどジューシーで柔らかく仕上がる
低温調理最大のメリットは、なんといってもその仕上がりの美味しさです。火を使うとパサつきがちな鶏むね肉や、火加減の難しいかたまり肉なども、しっとり柔らかく仕上げることができます。
- ほったらかしでOK!調理が簡単
温度と時間を設定すれば、あとは調理器が自動で管理してくれます。そのため、火加減を気にしてコンロの前につきっきりになる必要がありません。調理中に他の家事をしたり、別の料理を作ったりと、時間を有効活用できるのも魅力です。
- 栄養素を逃しにくい
食材を袋に入れて調理するため、茹で調理のようにビタミンなどの水溶性の栄養素がお湯に溶け出す心配がありません。食材が持つ栄養を効率的に摂取できるため、健康志向の方にもおすすめです。
- 洗い物が楽ちん
食材は袋に入っているため、鍋が汚れにくいのが特徴です。調理後の面倒な片付けが楽になるのは、嬉しいポイントですね。
知っておきたい低温調理のデメリットと注意点
メリットが多い低温調理ですが、始める前に知っておきたい注意点もあります。
- 調理に時間がかかる
低温でじっくり加熱するため、一般的な調理法よりも時間がかかります。特に、豚肉や鶏肉など食中毒のリスクがある食材は、安全のために数時間の調理が必要になることもあります。
- 食中毒のリスク
低温で加熱するということは、菌が繁殖しやすい温度帯を通過する時間が長くなるということでもあります。正しい知識を持たずに自己流で調理すると、食中毒の危険性が高まります。必ず信頼できるレシピの温度と時間を守ることが重要です。
- 独特の臭みが残ることがある
旨味や水分を閉じ込めるということは、同時に食材の臭みも残りやすいということです。気になる場合は、ハーブや香味野菜と一緒に調理する、調理前に塩を振って水分を出すなどの工夫が必要です。
- 焼き色がつかない
低温で加熱するため、こんがりとした美味しそうな焼き色はつきません。
ローストビーフやステーキなどは、低温調理後にフライパンやバーナーで表面にさっと焼き色をつける「後焼き」一手間を加えることで、香ばしさが加わり、より本格的な仕上がりになります。
低温調理の始め方|専用調理器がなくても大丈夫!
「低温調理って、専用の機械がないとできないんでしょ?」と思われがちですが、実は家庭にある道具でも代用可能です。まずは気軽に試してみましょう。
まずは揃えたい基本の道具
低温調理を始めるために、最低限揃えたい基本的な道具をご紹介します。
- 大きめの鍋: 食材全体がしっかりお湯に浸かる深さのあるものが理想です。
- 食品用耐熱袋(ジップロック®など): 必ず「湯せん調理」に対応しているか、耐熱温度が100℃以上あるかを確認しましょう。
- 調理用温度計: 正確な温度管理は低温調理の要です。1秒で測れるような応答の速いデジタル温度計が便利です。
- 鍋の蓋やアルミホイル: お湯の蒸発を防ぎ、温度を安定させるために使います。
【方法別】低温調理器がなくてもできる?
専用の低温調理器がなくても、ご家庭にある調理器具で低温調理を体験できます。
- 炊飯器の保温機能を使う方法:
多くの炊飯器に備わっている保温機能(約60℃~70℃)を利用する方法です。ローストビーフやサラダチキンなど、比較的長時間の保温が必要な調理に向いています。ただし、機種によって温度が異なるため、一度温度計で測っておくと安心です。
- 大きめの鍋とコンロを使う方法:
鍋にお湯を張り、コンロで加熱しながら温度計で温度をチェックし、火加減を調整する方法です。こまめな温度管理が必要ですが、手軽に始められるのがメリットです。
あると便利!低温調理器の選び方
低温調理にハマったら、専用の低温調理器の購入を検討するのがおすすめです。正確な温度管理とタイマー機能で、失敗なく、より手軽に美味しい低温調理レシピを楽しめます。
|
選び方のポイント |
詳細 |
おすすめ |
|
出力(W数) |
パワーが大きいほど、設定温度に達するまでの時間が短くなります。大きな鍋でも温度が安定しやすいです。 |
1000W以上のハイパワーモデルが、時短にも繋がりおすすめ。 |
|
取り付け方法 |
鍋への取り付け方には「クリップ式」と「ネジ式」があります。 |
手軽に着脱できる「クリップ式」が人気ですが、鍋の形状によっては「ネジ式」の方が安定します。 |
|
対応鍋サイズ |
使用したい鍋の深さや容量に対応しているかを確認しましょう。
スポンサーリンク
|
一般的には深さ15〜20cm程度の鍋が必要になります。大は小を兼ねるため、大きめの鍋に対応できるものが便利です。 |
|
付加機能 |
Wi-Fi連携でスマホから操作できるモデルや、防水性能が高いモデルなどがあります。 |
スマホでレシピ検索から設定までできるモデルは、初心者でも使いやすいです。 |
【食材別】料理好きがハマる!絶品低温調理レシピ
低温調理は、肉料理だけでなく、魚介や野菜、デザートまで、幅広い食材を美味しく変身させてくれます。ここでは、特におすすめの低温調理レシピをご紹介します。
まずはコレ!定番の肉レシピ
低温調理の真骨頂といえば、やはり肉料理。いつものお肉が、驚くほど柔らかくジューシーに仕上がります。
感動のしっとり食感「サラダチキン」
パサつきがちな鶏むね肉も、低温調理なら驚くほどしっとり。一度食べたら市販のサラダチキンには戻れないかもしれません。
【作り方のポイント】
鶏むね肉(厚さ3cm程度)に塩、こしょう、お好みのハーブをすり込み、食品用耐熱袋に入れて空気をしっかり抜きます。63℃で1時間30分ほど加熱するのが一般的です。加熱後、袋のまま氷水で急冷することで、余熱で火が通り過ぎるのを防ぎ、しっとり感をキープできます。
おもてなしにも「絶品ローストポーク」
火加減が難しいかたまり肉のローストポークも、低温調理なら失敗知らず。均一に火が通った、美しいピンク色の断面に仕上がります。
【作り方のポイント】
豚肩ロースかたまり肉に塩こしょう、お好みのハーブ、にんにくなどをすり込みます。63℃で4時間ほどじっくり加熱します。最後にフライパンで表面に焼き色をつけると、香ばしさが加わり、より本格的な味わいになります。
贅沢な味わい「和牛ランプのユッケ風」
生食が難しくなったユッケも、低温調理なら安全に、そして生に近い食感で楽しむことができます。
【作り方のポイント】
新鮮な牛もも肉やランプ肉の塊を使い、食中毒菌のリスクを考慮して58℃で3時間ほど加熱します。加熱後は氷水で急冷し、細切りにします。ごま油、醤油、コチュジャンなどで作ったタレと和え、卵黄を乗せれば完成です。
魚介や野菜、デザートだっておまかせ!
低温調理の活躍の場は、お肉だけではありません。魚や野菜、デザートのレシピも豊富です。
ふっくら仕上がる「魚のコンフィ」
コンフィとは、低温のオイルでじっくり煮るフランス料理の調理法。低温調理器を使えば、家庭でも手軽に挑戦できます。
【作り方のポイント】
塩を振った鮭やサバなどの切り身を、ハーブやニンニクと共にオリーブオイルを入れた耐熱袋に入れ、低温で加熱します。魚の種類によりますが、例えば鮭なら50℃で30分、サバなら60℃で1時間などが目安です。
素材の甘みが引き立つ「野菜の低温調理」
低温でじっくり加熱することで、野菜が持つ本来の甘みや旨味を最大限に引き出すことができます。栄養素を逃しにくいのも嬉しいポイントです。
【作り方のポイント】
ブロッコリーやアスパラガスは85℃で15分ほど加熱すると、シャキッとした食感を残しつつ甘みがアップします。かぼちゃやさつまいもなどの根菜類も、85℃で1時間~1時間半ほど加熱することで、驚くほど甘く、ホクホクに仕上がります。
なめらか食感「濃厚プリン」
温度管理が難しいプリンも、低温調理なら"す"が入ることなく、まるでお店のような、とろけるほど滑らかな食感に仕上がります。
【作り方のポイント】
卵、牛乳、砂糖などを混ぜて作ったプリン液を濾し器で2回ほどこし、耐熱容器に入れます。80℃のお湯で1時間ほど加熱します。泡立てないように静かに混ぜることが、より滑らかに仕上げるコツです。
これで安心!低温調理の安全性とQ&A
手軽で美味しい低温調理ですが、食中毒のリスクを正しく理解し、安全に行うことが何よりも大切です。
食中毒を防ぐための正しい知識
低温調理では、食中毒菌が増殖しやすい危険温度帯(約20℃~50℃)をゆっくりと通過します。そのため、加熱温度と時間の管理が非常に重要になります。
- 信頼できるレシピを守る: 自己流のアレンジはせず、厚生労働省のガイドラインや、信頼できる情報源(調理器メーカーの公式レシピなど)の加熱時間・温度を守りましょう。
- 中心温度と時間を意識する: 食中毒菌を死滅させるには「中心温度75℃で1分以上」またはそれに相当する「63℃で30分以上」の加熱が必要です。食材の厚みによって中心部に熱が伝わる時間が変わるため、厚い食材は加熱時間を長くする必要があります。
- 新鮮な食材を使い、衛生的に調理する: 調理前には手を洗い、清潔な調理器具を使用しましょう。
- 調理後は速やかに食べるか、急冷して保存: 調理後すぐに食べない場合は、袋のまま氷水などで急冷し、速やかに冷蔵・冷凍保存してください。
Q&A:よくある質問
Q1. ジップロック®などの袋は本当に安全なの?
A1. ポリエチレン製の食品用耐熱袋であれば、低温調理の温度帯(通常100℃以下)では有害物質が溶け出す心配はないとされています。ただし、必ず製品に表示されている「湯せん対応」の表記と耐熱温度を確認してください。鍋肌に直接触れて溶けないように、鍋底に布巾を敷くなどの工夫をするとより安心です。
Q2. 低温調理したお肉が赤くても大丈夫?
A2. 正しい温度と時間で加熱されていれば、お肉がピンク色でも安全です。これは、肉の色素であるミオグロビンが高温で加熱したときのように褐色に変化していないためです。見た目だけで判断するのは危険なので、必ずレシピ通りの加熱管理を行ってください。
Q3. 電気圧力鍋やスロークッカーとの違いは?
A3. 電気圧力鍋は高温・高圧で時短調理を得意とし、スロークッカーは低温で煮込む調理法です。これらに対し、低温調理器は食材に合わせて0.5℃単位などで細かく温度を設定し、正確に維持できる点が最大の違いです。この正確な温度管理こそが、レストランのような絶妙な火入れを実現する鍵となります。
いつもの食材をレストラン級の逸品に変えてくれる低温調理。正しい知識を身につけて、安全に美味しく、新しい料理の世界を楽しんでみませんか?
いつものお肉が絶品に!低温調理の基本と絶品レシピ集まとめ
低温調理は、正しい温度と時間さえ守れば、誰でも簡単に「しっとり・ジューシー・失敗知らず」の料理を楽しめる調理法です。
鶏むね肉やかたまり肉といった難易度の高い食材も、驚くほど柔らかく仕上がり、普段の食卓をワンランク上へ引き上げてくれます。
専用調理器がなくても、鍋や炊飯器で始められる手軽さも大きな魅力。
安全面に配慮し、信頼できるレシピを守れば、肉・魚・野菜・デザートまで幅広く活躍します。
いつもの食材が“ごちそう”に変わる低温調理で、毎日の料理をもっと楽しく、もっと美味しくしてみてはいかがでしょうか。